ブラジル 外資規制
- 1.法令
- 2.外資の定義
- 3.外資の登録義務
- 4. 資本投下
- 5. 資本金の本国送還
- 6.金融取引税
- 7.規制分野
- (1)禁止
- 核エネルギー開発関連事業
- 保健医療事業
- 郵便及び電気通信事業
- 航空宇宙産業(人工衛星、宇宙船、航空機の発射及び軌道測位及び関連する活動に関するもの。右機器及び付属品の生産又はマーケティングは除く。)
- (2)規制
- 外国人の支配下にあるブラジルの会社、又は、ブラジルにおける経営が承認されている海外法人による地方の土地の取得、経営又は賃借は、法律に規定された一定の条件が必要になる。場合によっては議会の承認も必要となる(別項目にて詳述)。
- 沿岸部の不動産取得についても、国防上の理由から、規制がある。これらの不動産取得は、国家安全保障会議の本部事務所による事前の承認を条件とする。
- 金融機関に対する海外投資も規制されている。しかしながら、これらの規制は国益のために適用されない場合もある。実際、多くの外資系金融機関がブラジルで展開している。
- 公共航空サービスには所轄行政庁の事前確認が必要。法律によれば右事前確認は、ブラジルの法人に対してのみ与えられるとされている。ブラジルの法人とみなされるためには、少なくとも80%の議席権がブラジル人によって保有されていなければならない。さらに、これらの企業の経営は、専らブラジル人によって行われる必要がある。議決権20%以下の外資参入であっても、認可が必要である。
- ラジオ、テレビのみならず、新聞、雑誌及び他の出版物の所有及び経営に対しても、外資参入には一定の規制がある。
- 外資の支配下にあるブラジル企業が鉱物掘削関連の経営を行う場合は、当局の許可が必要となる。
ブラジルにおける外資規制は、1962年9月3日制定の法律第4131号及び1964年8月29日制定の法律第4390号に基づいている。
外国に所在し或いは本店を置く個人又は企業が、経済活動のためにブラジル国内に持ち込む資本は、いかなるものであっても、外資として取り扱われる。流通通貨に限らず、商品、機械類、あるいは設備等も、外資と見なされている。
1995年の憲法改正までは、ブラジル企業=「民族資本」、外資=それ以外(すなわちブラジル国内で営業していようが、外国資本が入っている場合は外資)とされてきたが、1995年以降、ブラジル企業=「ブラジルで営業している企業」(すなわち外資注入されていてもブラジル国内で営業していればブラジル企業扱い)、外資=それ以外とされ、外資規制緩和の傾向にある。
すべての外資はブラジル中央銀行に登録されなければならない。この登録を経て、海外送金、資本の本国送還などあらゆる資本の流通が可能となる。
外資登録は、すべてブラジル中央銀行の、”Registro Declaratorio Eletronico - Investimento Externo Direto-PFR-IED”(外国直接投資―電子確認登録書。以下”RDE-IED”という。)と呼ばれる電子情報システムを通して行われなければならない。
なお、M&Aに際して、買収者は、買収の対価と無関係に、被買収会社によって過去に保有されていた外資登録と同量の資本をRDE-IEDに登録することができる。ただし登録名義は変更されなければならない。
ブラジルに投資する外国投資家の属性に特に規制はないが、外国投資家はまず、ブラジルにおける代理人を選任する必要がある。代理人は当該外国投資家をブラジル証券委員会(CVM)に登録するための各種手続を行う。
外国人投資家が保有する各種有価証券は、証券委員会又は中央銀行の認定を受けた機関によって管理されなければならない。所定の条件に該当する場合は、SELICと呼ばれる特別な決済システム、又は、店頭市場管理機関(CETIP)によって管理される登録及び金融決済システムに登録されなければならない。
日本から資本投下する方法としては、現地法人を設立し、日本の親会社から貸付(親子ローン)を行うことも考えられる。ブラジルの金融機関貸付は日本と比べて高金利のため、低利で融資を受けられる可能性がある。しかし、親子間の利益の付け替えであると税務当局に見なされる場合には移転価格税制の問題が発生するため、考慮が必要である。
ブラジル中央銀行に登録された外資は、当局による事前承認なく、いつでも、本国送還できる。
投下資本額と同額までの本国送還であれば、所得税は課税されないが、キャピタル・ゲインに相当する部分については、 15%の源泉所得税が賦課される。
日本ブラジル租税条約により、日本企業が、ブラジル国内の子会社につき10%以上の株式を所有していれば、「外国子会社配当益金不算入制度」を用いて、配当額の95%を益金不算入とすることができる。
なお、資本の本国送還に限らず、海外送金にあたっては、当該金員がRDE-IEDシステムに登録されていなければならない。登録のない資本、利益等の送金は許されない。
現在、留意が必要なのは、金融取引税の動向である。
ブラジルでは、長年、国外の投資家に対して金融取引税が課されることはなかった。
ところが、米国等の先進国による相次ぐ低金利政策により、ブラジルへの外貨流入が進み、レアル高が進行した。そこでブラジル政府は、2009年10月以降、ブラジル国債等の債権やデリバティブを含む投資商品の購入代金の送金に関わる為替取引について、2%の金融取引税を課すこととした。2010年10月には、債権投資に対する税率が6%に引き上げられた。
しかしながら、世界経済減速による国内景気悪化への懸念から、ブラジル政府は2011年12月、株式に対する金融取引税率を0% に引き下げた。
さらに欧州債務危機の影響もあり、ブラジルへの外資流入が減少に転じたため、2013年6月5日、ブラジル国債などの債権投資に対する金融取引税6%も撤廃された。他方で、デリバティブ取引に対する金融取引税(1%)はなお維持されている。
下記の分野については外資の進出が禁止又は規制されている。