ベトナムにおける不動産規制
2016年12月26日
ベトナムにおいては、憲法において土地は全人民の所有に属する公財産であり、国が所有者 を代表し、統一的に管理すると規定し、2013年に改正された土地法において、国家は土地使用者に土地使用権を交付するとされている。他方で、建物については、土地とは別の所有権が認められており、こちらも近時改正された住宅法に基づいて、外国人・外資系企業であっても、一定の要件を満たす場合には、アパートや戸建てを所有することが認められている。
本稿では、まず、1.ベトナムにおける土地使用権について紹介し、次に、2. ベトナムの建物所有権について検討する。
- 1. 土地使用権
- 外資系企業が取得できる土地使用権
- (1) 割当による土地使用権
- ・ 販売又は販売・賃貸用住宅の建設投資プロジェクトを実施する場合
- (2) 賃貸による土地使用権
- (a) 国から貸与を受ける方法
- ・ 農業・林業生産、水産物養殖、製塩の投資案件用土地、非農業生産・経営用土地、商売目的を目指す公共工事建設用土地、賃貸住宅の投資案件実施用土地を使用する場合
- ・ 事業や工事の建設に土地を使用する場合
- (b) 土地使用権を有するベトナム企業に出資する方法
- (c) 土地使用権による現物出資を受ける方法
- (d) 工業団地・工業区・加工輸出区等において国又は土地使用権者から貸与を受ける方法
- 2. 建物所有権
- ・ 住宅建設プロジェクト内のアパート又は戸建て住宅
- ・ アパートの場合は1棟の30%以下、戸建ての場合は1町村当たり250戸以下
ベトナムにおいては、憲法において土地は全人民の所有に属する公財産であり、国が所有者 を代表し、統一的に管理すると規定し、2013年に改正された土地法において、国は土地使用者に土地使用権を交付するとされており、一定の土地使用権は土地に関する財産権として広く不動産取引の対象となっている。
土地使用権を大きく分類すると、①割当による土地使用権と、②賃貸による土地使用権に分けられる。①は無償か有償かにより、②は賃借料が年払いか残存期間分一括払いかにより区別され、法定されている権利の内容が異なっている。
以下では、ベトナムにおいて、外資系企業が取得することができる主な土地使用権を検討する。
ベトナム国民及びベトナム資本が支配するベトナム企業は、一定の要件を満たす場合には、ベトナム政府から土地使用権の割当を受けることができる。2013年改正により、外資系企業であっても、以下の場合には、有償で土地使用権の割当を受けることが認められた。
かかる土地使用権の割当期間は、原則として50年以下の範囲で決定される。この場合、外資系企業は、土地使用権及び建物等の土地に定着する資産について、譲渡・賃貸・転貸・抵当権の設定・現物出資が可能である。
外資系企業は、以下の(a)~(d)の場合に、土地賃貸借契約に基づいて、土地使用権を取得することが可能である。
外資系企業は、以下の場合に、国から有償で土地の貸与を受けうる。
外資系企業が賃料を一括で支払う場合、土地使用権及び建物等の土地に定着する資産について、譲渡・賃貸・転貸・抵当権の設定・現物出資が可能である。
他方で外資系企業が賃料を1年毎に支払う場合、建物等の土地に定着する財産の売却・抵当権の設定・現物出資は可能であるが、土地使用権それ自体について譲渡その他の処分をすることはできない。
外資系企業は、一定の土地使用権を保有するベトナム企業(以下「対象企業」という。)の株式・出資持分を取得する方法により、間接的に土地使用権を取得することが可能である。
対象企業の資本を外資系企業が支配している場合と、マイノリティ出資にとどまる場合とで、土地使用権の内容が異なることになる。
ベトナムにおいては、土地所有権は上記のとおり国に帰属しているが、建物については土地とは別の所有権が認められており、登記をすることも可能である。2015年7月1日から施行された改正住宅法においては、一定の要件を満たすベトナムで活動する外資系企業及びベトナムへの入国許可を有する外国人等について、ベトナム国内で住宅を所有することを認め、その範囲が拡張されている。
以下の条件を満たす住宅については、外国企業及び外国人が取得することができる。
住宅所有権の存続期間は、外国人については最長50年で延長が可能である。また、外資系企業については、その投資証明書の有効期間が住宅所有権の存続期間の上限とされている。
取得した住宅の利用方法については、外国人は、所轄官庁に書面で通知し住宅の賃貸に係る納税をすることを条件として、住宅を賃貸することが認められている。これに対し、外資系企業については、当該企業で勤務する者の居住目的に限定されており、住宅を賃貸し、事務所として使用することは明文で禁止されているため、留意しておく必要がある。ただし、これらの制限については、住宅法等に従いベトナムにおいてプロジェクトによる住宅の建築投資をする外国人・外資系企業には適用されないため、これらの者についても、住宅の賃貸が可能である。
以上