Ⅲ.機関
1. 株主総会
(1) 株主総会の種類・開催時期・開催日時・開催場所
インド会社法は、定時株主総会(AGM: Annual General Meeting)と臨時株主総会(EGM: Extraordinary General Meeting)の2種類の株主総会を規定しています。
- (a) 定時株主総会
定時株主総会とは、毎年1回定期的に開催される株主総会であり、総会においては、毎会計年度の決算報告及び監査人の選任等が決議されます
(i) 開催時期
一人会社を除くすべての会社は、毎年定時株主総会を開催しなければなりません。なお、設立後最初の定時株主総会は、当該会社の最初の会計年度末日から9ヶ月以内に開催されなければなりません。それ以降の定時株主総会は、前回の定時株主総会開催後15ヶ月以内に開催されなければならず、且つ設立後最初の定時株主総会を除き、当該会社の会計年度末日から6ヶ月以内に開催されなければなりません(法96条1項)。
(ii) 開催日時・場所
定時株主総会は、原則として、国家の休日(National Holiday)ではない日の営業時間内(午前9時から午後6時)に、会社の登記事務所、もしくは会社の登記事務所がある市町村内のその他の場所において開催されなければなりません。
- (b) 臨時株主総会
臨時株主総会とは、定時株主総会以外の株主総会であり、臨時株主総会においては、開催の目的とされた事項につき決議されます。
(i) 開催時期
臨時株主総会は、取締役会が適当と見做す場合はいつでもこれを開催することができます。また、議決権行使可能な払込株式資本の10分の1以上の株式を保有する株式会社の株主らによる株主総会の招集請求があった場合、取締役会は、株主総会を招集しなければなりません(法第100条1項)。招集請求があったにもかかわらず取締役会が株主総会を招集しない場合、上記招集請求者自身が株主総会を招集することができます(法第100条4項)。
(ii) 開催日時・場所
臨時株主総会の開催日時については、定時株主総会のようにこれを制限する規定はありません。また、開催場所については、法第100条4項に基づき招集権者自身が株主総会を招集する場合、その開催場所は、会社の登記事務所、もしくは会社の登記事務所がある市町村内のその他の場所としなければなりません。なお、上記以外の場合であっても、臨時株主総会はインド国内で開催されなければなりません。
(2) 招集手続
株主総会は、招集期間を21日以上とする書面または電子的方法による招集通知を、株主、監査人、及び取締役に送付する方法で招集されなければなりません(法第101条1項・3項)。但し、招集期間については、当該株主総会において議決権を有する株主の95%以上の書面又は電子的方法による同意があれば、これを短縮することができます(法第101条1項但書)。もっとも、法は招集期間の短縮のみを認めており、招集通知自体の省略は認めていない点には注意が必要です。
(3) 定足数
株主総会の定足数は、会社の附属定款が法定の定足数よりも多い数を定足数とする旨を定めていない限り、以下のとおりとなります(法第103条1項)。
公開会社 | 非公開会社 | |
株主総会開催日現在の株主数が1,000名未満の場合 | 5名 | 2名 |
株主総会開催日現在の株主数が1,000名以上5,000名以下の場合 | 15名 | |
株主総会開催日現在の株主数が5,000名を超える場合 | 30名 |
(4) 議決権の行使
株主総会においては、原則として株主による挙手によって決議されます(法第107条1項)。挙手による決議の場合、その持株数に関係なく各株主が一議決権を有する(一株主一議決権)ことになります。但し、議長によって投票による決議が命じられた場合、もしくは総議決権の10%以上又は支払済株式資本額が50万ルピー以上の株式を有する株主によって投票による決議が請求された場合には、投票によって決議されることになります(法第107条1項、法第109条1項)。また、決議が電子的方法によって行われる場合も同様に投票によって決議されることになります(法第107条1項)。このような投票による決議の場合、その持株数に応じ一株あたり一議決権を有する(一株一議決権)ことになります。
(5) 代理人(Proxy)・代表者(Representative)
株主総会に出席し議決権を行使することができる株主は、自己に代わって株主総会に出席し議決権を行使する代理人(Proxy)を選任することが認められています(法第105条1項)。なお、代理人には、当該株主総会での発言権が認められていない(法第105条1項但書)ことには注意が必要です。
また、法人が株主の場合、当該法人はその取締役会等の決議により、その代表者(Representative)として相当と思料する者に対して議決権行使の権限を授権することができます(法第113条1項)。このように議決権行使権限を授権された代表者は、当該法人と同一の権限を行使することができます(法第113条2項)。
(6) 普通決議と特別決議
インド会社法においても、株主総会での決議要件として、普通決議と特別決議が規定されています。
- (a) 普通決議
当該決議に賛成の票数がこれに反対する票数を上回ることによって可決されること(すなわち出席株主の過半数の賛成があった場合)を決議要件とする場合、当該決議は普通決議となります(法第114条1項) - (b) 特別決議
当該決議に賛成の票数がこれに反対する票数の3倍以上となることによって可決されること(すなわち出席株主の4分の3以上の賛成があった場合)を決議要件とする場合、当該決議は特別決議となります(法第114条2項)。
2.取締役
(1) 取締役の数(法第149条1項)
- (a) 公開会社
公開会社の場合、3名以上15名以下の取締役を置かなければなりません。但し、株主総会の特別決議があれば15名を超える取締役を置くことも許されます。 - (b) 非公開会社
非公開会社の場合、2名以上15名以下(一人会社の場合、1名以上15名以下)の取締役を置かなければなりません。但し、株主総会の特別決議があれば15名を超える取締役を置くことが許される点は公開会社の場合と同様です。
(2) 特に設置を義務付けられる取締役
インド会社法は、別途規則によって規定される一定の要件を充たす会社につき、以下の取締役の設置を義務付けています。
- (a) 女性取締役
以下に該当する会社は、1名以上の女性取締役を設置しなければなりません(法第149条1項但書2)。
- すべての上場会社
- ①支払済株式資本が10億ルピー以上、又は②売上高が30億ルピー以上を有するその他すべての公開会社
- (b) 居住取締役
すべての会社は、当該会計年度に合計182日以上インドに滞在した取締役を1名以上置かなければなりません。但し、新規設立会社の場合においては、会社を設立した会計年度末において、上記の居住日数を比例的に充たせばよいことになります(法第149条3項)。 - (c) 独立取締役
すべての上場会社は、全取締役のうち3分の1以上の取締役を独立取締役としなければなりません。また、公開会社で、①支払済株式資本が1億ルピー以上、又は②売上高が10億ルピー以上、又は③未払いローン債務及び社債等の総額が5億ルピーを超える場合は、2名以上の独立取締役を設置しなければなりません(法第149条4項)。
(3) 取締役会によって選任することが認められるその他の種類の取締役
- (a) 追加取締役(additional director)
取締役会は、附属定款にその旨が規定されている場合、株主総会において取締役の任命決議を否決された者以外の者を、選任後最初の定時株主総会までを任期とする追加取締役としていつでも選任することができます(法第161条1項)。後述のとおり、取締役は株主総会によって選任されなければならないところ、取締役の辞任により新たな取締役を早急に選任しなければならない場合に、取締役会のみで選任可能な追加取締役が利用されることが多く見受けられます。なお、取締役と追加取締役との間で、その権限及び義務について特に差異はありません。 - (b) 代替取締役(alternate director)
取締役会は、附属定款にその旨が規定されている場合、又は株主総会においてその旨の決議がされた場合、3ヶ月以上インドを不在にする取締役のため、その不在期間中にその職務を代行する代替取締役を選任することができます。なお、代替取締役の任期は、代替される取締役の任期を超えてはならず、また代替される取締役がインドに戻って来た場合、代替取締役は退任しなければなりません(法第162条1項)。
(4) 選任・解任
すべての取締役は、株主総会普通決議によって選任されなければなりません(法第152条2項)。
また、審判所(Tribunal)によって選任された取締役でない限り、株主総会普通決議によって、その任期満了前に取締役を解任することができます(法第169条1項)。
(5) 任期
- (a) 公開会社
公開会社の場合、附属定款においてすべての取締役が毎年の定時株主総会において退任する旨を規定していれば、その任期は選任された定時株主総会から次の定時株主総会までの期間となります。附属定款にこのような規定がない場合は、全取締役の3分の2以上の取締役は、毎年の定時株主総会においてローテーションで退任しなければなりません。(法第152条6項 (a))。 - (b) 非公開会社
非公開会社の場合、法は取締役の任期につき特に規定しておらず、附属定款においてその任期を自由に規定することができます。 - (c) 代表取締役(managing director)及び常勤取締役(whole-time director)
代表取締役及び常勤取締役の任期は5年以下とされています(法第196条2項)。 - (d) 独立取締役
独立取締役の任期は一期連続5年間までとされています。株主総会特別決議によって再任することができますが、二期連続10年間を超えることはできません。もっとも、退任してから3年経過すれば再度選任することができます(法第149条10項・11項)。
(6) 不適格要件
- (a) 選任不適格事由
法第164条1項は、以下の事由に該当する者を取締役として選任することができない旨を規定しています。
- 管轄裁判所によって心神耗弱であると宣告された者
- 免責されていない破産者
- 破産の申立てをし、その申立てが係属中である者
- 不道徳行為か否かを問わず、その違法行為につき裁判所によって有罪判決を受け、それにより6月以上の禁固刑を宣告され、刑期の満了から5年が経過していない者(但し、7年以上の禁固刑を宣告された者は、取締役への任命資格を一切有しない)
- 裁判所又は審判所により取締役選任につき不適格である旨の命令がなされ、その命令が効力を有している者
- 保有する株式の払込みをせず、最終払込期日から6ヶ月を経過している者
- 過去5年間に関連当事者間取引に関する法令違反につき有罪判決を受けた者
- 取締役識別番号(DIN)を取得していない者
- (b) 再任不適格事由
法第164条2項は、以下の事由に該当する会社の取締役である者又は取締役であった者を再任することができない旨を規定しています。
- 会計書類又は年次報告書を3会計年度連続して提出していない会社
- 会社によって受領された預託金を払戻していない、その利息を支払っていない、償還日に社債を償還していない、その利息を支払っていない、もしくは宣言された配当金を支払っていない場合で、当該未払い又は未償還が1年以上継続している会社
(7) 取締役に対する規制
- (a) 利益相反取引
すべての取締役は、取締役として出席する最初の取締役会、及びその後の毎会計年度の最初の取締役会又は開示事項に変更がある場合は変更後の最初の取締役会において、他の会社等との利害関係を開示しなければなりません(法第184条1項)。
さらに、①取締役がその株式を2%以上保有する法人、もしくは取締役がプロモーター、マネージャー、又はCEOである法人との間で締結される契約、又は②取締役がパートナー、オーナー、又は社員であるファーム、その他の社団との間で締結される契約につき、直接的又は間接的に利害関係を有する取締役は、当該契約につき決議される取締役会においてその利害関係の性質を開示しなければなりません(法第184条2項)。 - (b) 取締役に対する貸付け
会社は、直接的か間接的かを問わず、その取締役又は取締役と利害関係を有する他の者らに対する貸付け、保証、及び担保提供が禁止されています(法第185条1項)。
但し、①全従業員に適用される雇用条件に従ったものである場合又は株主総会特別決議によって承認されたスキームに従ったものである場合における代表取締役又は常勤取締役に対するローンの場合、②会社の通常業務における貸付け、保証、及び担保提供で、各種の政府債券の利回り以上の金利で利息が課せられる場合、③親会社によるその完全子会社に対する貸付け又は完全子会社に対する貸付けに関する親会社の保証又は担保提供の場合、もしくは④銀行又は金融機関によるその完全子会社に対する貸付けについての親会社の保証又は担保提供の場合は例外的に認められています(法第185条3項)。 - (c) 関連当事者間取引
会社が以下に関する契約を関連当事者と締結する場合、取締役会決議による同意、及び別途規則に規定される条件に従わなければなりません(法第188条1項)。
- 商品又は原料の売買又は供給
- 資産の売却、処分、譲受
- 資産のリース
- サービスの利用、提供
- 商品、原料、サービス、資産の販売、譲受についての代理人の選任
- 当該会社、その子会社、関連会社の役職又は地位へ当該関連当事者を選任すること
- 当該会社の株式又は社債の引受け
但し、別途規則に定める金額以上の払込済株式資本を有する会社、もしくは別途規則に定める金額を超える取引の場合は、株主総会普通決議による事前承認が必要となります(法第188条1項但書1)。この場合の株主総会決議において、関連当事者が株主である場合、その株主は議決権を行使することができません(法第188条1項但書3)。また、法第188条1項の規定は、通常の業務における独立企業間価格に基づく取引には適用されません(法第188条1項但書4)。さらに、親会社とその完全子会社間の取引の場合、その完全子会社の決算が当該親会社の連結決算の対象とされ、かつ承認を求める株主総会にその決算書が上程される場合は、株主総会普通決議による事前承認は不要とされています(法第188条1項但書5)。
(8) 報酬
取締役の報酬は、法第197条の規定に従い、附属定款又は株主総会普通決議(附属定款に株主総会特別決議によると規定されている場合は株主総会特別決議)によって決定されます(法第197条4項)。
- (a) 公開会社の場合の報酬制限
公開会社における取締役の報酬総額は、当該会計年度における純利益の11%を超えてはならないとされています(法第197条1項)。但し、中央政府の承認があれば、Schedule Vの条件に従い、純利益の11%を超えることもできます(同条項但書1)。
また、代表取締役、常勤取締役一人あたりに支払われる報酬は、当該会計年度における純利益の5%を超えてはならず、2名以上の取締役がいる場合、これらの取締役とマネージャーの報酬総額は当該会計年度における純利益の10%を超えてはならないとされています(同条但書2 (i))。さらに、代表取締役及び常勤取締役以外の取締役に支払われる報酬総額は、代表取締役又は常勤取締役又はマネージャーがいる場合は、当該会計年度における純利益の1%を超えてはならず、それ以外の場合は3%を超えてはならないとされています(同条但書2 (ii))。
なお、公開会社の代表取締役及び常勤取締役の報酬に関する条件は、取締役会の承認、次回の株主総会での承認が必要であり、さらにSchedule Vに規定されている条件と異なる場合は中央政府の承認が必要となります(法第196条4項)。 - (b) 非公開会社の場合の適用除外
取締役の報酬を規制する法第197条1項の規定は公開会社のみに適用され、非公開会社には適用されません。
3.主要経営責任者(KMP: Key Managerial Personnel)
(1) 定義
主要経営責任者とは、以下の者を意味すると定義されています(法第2条51項)。
① 最高経営責任者(Chief Executive Officer)、又は代表取締役(managing director)、又はマネージャー
② 会社秘書役(company secretary)
③ 常勤取締役(whole-time director)
④ 最高財務責任者(Chief Financial Officer)
⑤ 取締役より1段階下の他の役員で、取締役会によって主要経営責任者として指名された常勤のその他の役員
⑥ 別途規則によって定められるその他の役員
(2) 選任
公開会社の代表取締役、常勤取締役、又はマネージャーは、法第197条及びSchedule Vの規定に従って選任され、選任に関する条件は、取締役会の承認、次回の株主総会での承認が必要であり、さらにSchedule Vに規定されている条件と異なる場合は中央政府の承認が必要となります(法第196条4項)。
(3) 任期
代表取締役、常勤取締役、又はマネージャーの任期は5年以下とされています(法第196条2項)。
(4) 常勤主要経営責任者の設置義務
上場会社、又は支払済株式資本が1億ルピー以上の公開会社は、以下の常勤主要経営責任者を設置しなければなりません(法第203条1項)。
① 代表取締役、最高経営責任者、又はマネージャー(これらがいない場合は常勤取締役)
② 会社秘書役
③ 最高財務責任者
4.取締役会
(1) 招集手続
取締役会は、招集期間を7日以上とする書面による招集通知を全取締役の登録住所に対し、手渡し、郵送、又は電子的方法によって送付する方法で招集されなければなりません(法第173条3項)。但し、招集期間については、緊急の議題の場合、独立取締役がいる場合はその1名以上の出席を条件にこれを短縮することができます(同条項但書1)。また、独立取締役が当該取締役会に出席しない場合は、当該取締役会における決議内容が全取締役に回覧され、独立取締役がいる場合はその1名以上によってその決議内容が承認された場合に、これを短縮することができます(同条但書2)。
(2) 定足数
取締役会においては、原則として、全取締役の3分の1又は2名のうちいずれか多い数がその定足数とされています(法第174条1項)。
但し、利益相反取引につき決議する取締役会(法第184条2項)において、利害関係取締役の数が全取締役の3分の2以上となる場合、利害関係取締役以外の取締役が2名以上出席すれば定足数を充たすとされています(法第174条3項)。
(3) 決議要件
法は取締役会の決議要件について特に規定していませんが、通常は出席取締役の過半数による賛成により可決されます。
(4) 取締役会の権限
取締役会は、インド会社法、基本定款及び附属定款等により株主総会によって行使しなければならない権限を除き、インド会社法、基本定款及び附属定款に基づいて株主総会において策定された規約に従い、会社に認められているすべての権限を行使することができるとされています(法第179条1項)。
また、以下の事項に関しては、取締役会決議により、取締役会が会社を代表してその権限を行使しなければならないと規定されています(法第179条3項)。
- 株式払込みが未了の株主に対して払込みを請求すること
- 法第68条に基づいて有価証券の買戻しを承認すること
- インド国内外を問わず、社債を含む有価証券を発行すること
- 金銭の借入れをすること
- 会社の資金で投資を行うこと
- ローンの承認、保証の付与、又は担保の提供を行うこと
- 財務諸表及び取締役会報告書を承認すること
- 会社の事業を多角化すること
- 合併(amalgamation, merger)、再建(reconstruction)を承認すること
- 会社の買収、他の会社の支配権又は相当量の出資比率を取得すること
- 別途規則に定められるその他一切の事項
5.各種委員会
(1) CSR委員会(Corporate Social Responsibility Committee)
- (a) 設置要件
インド会社法は、任意の会計年度において、①純資産が50億ルピー以上、②売上高が100億ルピー以上、又は③純利益が5,000万ルピー以上のすべての会社に、CSR委員会の設置を義務付けています(法第135条1項)。 - (b) 構成
CSR委員会は、3名以上の取締役で構成され、そのうち1名以上は独立取締役でなければなりません(法第135条1項)。
但し、法第149条4項に基づく独立取締役設置義務のない非上場の公開会社又は非公開会社の場合、CSR委員会は独立取締役以外の3名以上の取締役で構成されれば足ります。また、法定最低取締役数である2名の取締役のみを設置する非公開会社の場合、CSR委員会は、当該2名の取締役で構成されれば足ります。 - (c) 義務
(i) CSR委員会の義務
法はCSR委員会の義務につき、以下の点を規定しています(法第135条3項)。
① Schedule VIIに規定される活動を示すCSRポリシーを策定し、取締役会に勧告すること
② 上記ポリシーに言及されているCSR活動の支出額を勧告すること
③ 時宜に応じ、CSRポリシーの実行を監視すること
(ii)取締役会の義務
法はCSR委員会の設置義務がある会社の取締役会につき、そのCSR活動に関する義務として、以下の点を規定しています。
① 法第134条3項に基づく取締役会報告書において、CSR委員会の構成を開示すること(法第135条2項)
② CSR委員会による勧告を検討後、当該CSRポリシーを承認し、その内容を取締役会報告書において開示し、会社のウェブサイトがある場合にはそこに掲載すること(法第135条4項 (a))
③ CSRポリシーに含まれるCSR活動を実施すること(法第135条4項 (b))
④ CSRポリシーに従い、直近3会計年度中の平均純利益の2%以上を毎会計年度支出すること(法第135条5項)
- (d) Schedule VIIに規定されるCSR活動
Schedule VIIに規定されるCSR活動の具体的内容は、以下のとおりです。
- 飢餓、貧困、及び栄養失調の根絶、予防的健康管理及び公衆衛生(公衆衛生のために中央政府が設立したSwatch Bharat Koshに対する寄付を含む)を含むヘルスケアの促進、及び安全な飲料水の利用を可能とすること
- 特に子供、女性、老齢者、障害者への特別支援、職業訓練を含む教育の促進、生活向上プロジェクト
- 男女平等及び女性の地位強化、老人ホーム、女性・孤児のための施設、デイケアセンター、社会的・経済的不平等を軽減するための手段の促進
- 環境の持続的可能性、生態系のバランス、動植物の保護、動物の繁栄、アグロフォレストリー、天然資源の保護、及び土壌・大気・水質の維持(ガンジス川の活性化のために中央政府が設立したClean Ganga Fundへの寄付を含む)の確保
- 歴史的重要度のある建築物及び美術品の修復を含む国家的遺産の保護、公立図書館の設置、伝統工芸・美術の促進・発展
- 退役軍人、戦争未亡人、その扶養者の福祉のための手段
- 地方の運動競技、国家的競技、パラリンピック、オリンピック競技促進のための養成
- the Prime Minister’s National Relief Fund、又は指定カースト、特定部族、その他の弱者、女性の社会経済的発展、救済、及び福祉のため中央政府が設立した他の基金への寄付
- 中央政府によって承認された学術研究機関内に設置された技術的起業に対する寄付又は資金提供
- 地方開発プロジェクト
- スラム地域の開発
(2) 監査委員会(Audit Committee)
- (a) 設置要件
すべての上場会社、又は①支払済株式資本が1億ルピー以上、②売上高が10億ルピー以上、又は③負債総額が5億ルピーを超えるすべての公開会社の取締役会は、監査委員会を設置しなければなりません(法第177条1項)。 - (b) 構成
監査委員会は、3名以上の取締役で構成され、その過半数は独立取締役でなければなりません。また、議長を含む委員の過半数は、会計書類を理解する能力を有する者でなければなりません(法第177条2項)。 - (c) 監査委員会の義務
法は監査委員会の義務として、特に以下を規定しています(法第177条4項)。
① 監査人の選任、報酬、及び条件の勧告
② 監査人の独立性、業務遂行、及び監査過程の実効性の調査・監視
③ 会計書類及び監査人報告書の検査
④ 関連当事者間取引の承認及び事後的変更
⑤ 企業間ローン及び投資の精査
⑥ 必要に応じた会社の事業又は資産の価値評価
⑦ 内部的財務統制及びリスク管理システムの評価
⑧ 公募によって調達した資金の使途の監視等
(3) 指名・報酬委員会(Nomination and Remuneration Committee)
- (a) 設置要件
すべての上場会社、又は①支払済株式資本が1億ルピー以上、②売上高が10億ルピー以上、又は③負債総額が5億ルピーを超えるすべての公開会社の取締役会は、指名・報酬委員会を設置しなければなりません(法第178条1項)。 - (b) 構成
指名・報酬委員会は、3名以上の非常勤取締役(non-executive director)で構成され、そのうち半数以上は独立取締役でなければなりません(法第178条1項)。 - (c) 指名・報酬委員会の義務
法は指名・報酬委員会の義務として、以下を規定しています。
① 取締役適任者及びシニア・マネジメントに選任され得る者の選考、これらの者の選任・解任につき取締役会への勧告、及び取締役会、指名・報酬委員会、又は独立した社外のエージェントのいずれかによって行われるべき取締役会、取締役会委員会、及び個々の取締役の業務執行の効果的な評価方法を規定し、その履行と法令遵守を確認すること(法第178条2項)
② 取締役の適格性決定、長所、独立性に関する基準の策定、及び取締役、主要経営責任者、その他の従業員の報酬に関するポリシーを取締役会に勧告すること(法第178条3項)
(4) 利害関係者委員会(Stakeholders Relationship Committee)
- (a) 設置要件
一会計年度中の任意の時点において1,000名を超える株主、社債権者、その他の有価証券保有者等を有する会社の取締役会は、利害関係者委員会を設置しなければなりません(法第178条5項)。 - (b) 構成
利害関係者委員会は、非常勤取締役である議長及び取締役会によって決定される他の委員によって構成されなければなりません(法第178条5項)。 - (c) 利害関係者委員会の義務
利害関係者委員会は、会社の有価証券保有者からの苦情を検討・解決する義務を負うとされています(法第178条6項)。
6.監査人
(1) 監査人の数
すべての会社は、最初の定時株主総会において、監査人として1名又は1会計事務所を選任しなければなりません(法第139条1項)。
(2) 選任・解任
前1項の規定に関わらず、取締役会は、設立登記後30日以内に設立時監査人を選任しなければなりません(法第139条6項)。
それ以降については、第1回定時株主総会において、当該定時株主総会終了から第6回定時株主総会終了までを任期とする監査人を普通決議によって選任しなければなりません。その後、6回毎の定時株主総会において上記と同様に監査人を選任しなければなりません(法第139条1項)。
なお、上記に従って選任された監査人を解任するには、①中央政府からの事前承認、及び②株主総会特別決議が必要となります(法第140条1項)。
(3) 任期
上場会社、もしくは①支払済株式資本が1億ルピー以上の非上場公開会社、②支払済株式資本が2億ルピー以上の非公開会社、又は③支払済株式資本が前述①②に規定される額を下回るが、銀行・金融機関からの公的債務等が5億ルピー以上のすべての会社における監査人の任期は、以下のように制限されています(法第139条2項)。
- 個人が監査人の場合は、一期連続5年を超えて選任・再任してはならない。
- 会計事務所が監査人の場合は、二期連続10年を超えて選任・再任してはならない。
なお、いずれの場合も、任期満了日から5年間は同一会社の監査人として再任することはできません(法第139条但書1)。
(4) 報酬
監査人の報酬は、株主総会における普通決議又は当該株主総会において決定される方法で決定されなければなりません。但し、設立時監査人の報酬については、取締役会が決定することができます(法第142条1項)。
(5) 監査人の権限・義務
① 会計帳簿等閲覧権及び役員への情報開示・説明請求権(法第143条1項)
すべての監査人は、会社の登記事務所に保管されているか他の場所に保管されているかを問わず、いつでも会計帳簿等を閲覧する権利を有し、監査人としての業務遂行のために必要と思料する情報及び説明を役員に請求することができます。
② 自己が検査した会計及び株主総会に提出されるすべての会計書類に関し、株主に報告する義務等(法第143条2項)
監査人は、株主に対し、自己が検査した会計及び本法によって株主総会に提示されるすべての会計書類に関する報告をしなければならず、その報告には、本法の規定、会計基準、本法に基づいて監査報告書に記載しなければならない事項、その他の規則等を考慮し、かつその知る限りにおいて前述の会計及び会計書類を考慮し、当該会計年度末時点の会社の業務状況、当該会計年度の損益計算書、キャッシュ・フロー計算書等の真実かつ公正な見解を記載しなければなりません。
7.その他の機関
(1) 会社秘書役(Company Secretary)
- (a) 定義
会社秘書役とは、1980年インド会社秘書役法(the Company Secretary Act, 1980)第2条1項 (c) において定義され、本法に基づく会社秘書役の職務を果たすために会社によって任命された会社秘書役を意味するものと定義されています(法第2条24項)。 - (b) 設置要件
上場会社、又は支払済株式資本が1億ルピーを超える公開会社は、常勤の主要経営責任者の一人として常勤の会社秘書役を選任しなければなりません(法第203条1項 (ii))。さらに、これらの要件を充たさない場合であっても支払済株式資本が5,000万ルピー以上のすべての会社は、常勤会社秘書役を設置しなければなりません。 - (c) 会社秘書役の職務
法は会社秘書役の職務として、以下を規定しています(法第205条1項)。
① インド会社法、同規則、及び会社に適用されるその他の法規の遵守について、取締役会に報告すること
② 会社が該当する秘書基準を遵守していることを保証すること
③ 別途規則に規定される義務の履行
(2) 内部監査人(Internal Auditor)
- (a) 設置要件
以下に該当する各種の会社は、内部監査人を選任しなければなりません(法第138条1項)。
上場会社 | すべて |
非上場公開会社 | ① 前会計年度における支払済株式資本が5億ルピー以上 ② 前会計年度における売上高が20億ルピー以上 ③ 前会計年度中の任意の時点における銀行又は公的金融機関からの未弁済ローン又は借入れが10億ルピー以上 ④ 前会計年度における任意の時点における未弁済預託金が2億5,000万ルピー以上 |
非公開会社 | ①前会計年度における売上高が20億ルピー以上 前会計年度中の任意の時点における銀行又は公的金融機関からの未弁済ローン又は借入れが10億ルピー以上 |
- (b) 資格
法第138条1項に基づいて選任される内部監査人は、勅許会計士、原価計算会計士(cost accountant)、もしくは別途取締役会によって決定される他の専門職でなければなりません。 - (c) 内部監査人の職務
内部監査人は、会社の業務等につき内部監査を行うものとされています(法第138条1項)。