ブラジル 不動産取得規制
都市部の不動産取得については、特に規制なく、認められている。
他方、地方の不動産取得については、以下のとおり取得規制が存する。
地方の不動産(以下「地方不動産」という。)とは、農業、農業工業、畜産業の開発・開拓(公共投資の有無を問わない)に利用される、地方の建物又は一続きの土地であり、右定義に当てはまる限り、場所の如何を問わない(法4504号4条Ⅱ)(なお、ブラジルでは日本と異なり、土地と建物の所有権は一体である。)。
- ①外国人個人
- ②外国法人
- ③総量規制
- ④法律違反の効果
- ⑤近年の動き
・ブラジルに居住していない外国人個人は地方不動産を取得できない(法5709号)。
・ブラジルに居住している外国人個人の場合、1単位の地方不動産であれば、3MEIを超えない範囲で、自由に取得できる(法5709号)。MEI(modulos de exploracao indefinida)とは,国立植民農地改革院(Instituto Nacional de Colonizacao e Reforma Agraria:INCRA)が定める基準単位である。MEIの1単位あたりの面積は、自治体により5~100haと別異に定められている。各自治体におけるMEIの1単位あたり面積はINCRAのHPで確認できる(www.incra.gov.br/)。
・3MEIを超え50MEI以下の地方不動産取得には行政機関による許可が必要となる(法5709号)。
・50MEI(250ha~5,000ha)を超える地方不動産を取得については、国会の承認が必要となる(法5709号)。
・地方不動産の賃貸についても上記と同様の規制が適用される(法8629号)。
・外国法人の場合は、100MEI(500ha~10,000ha)を超える土地の取得或いは賃借について、国会の承認が必要となる(法8629号)
・外国法人による地方不動産の取得は、農業、畜産、工業、コロニーに関する計画の実施を目的としていなければならず、これらの計画は法人の定款に規定されていなければならない。また、これらの計画はブラジル農業省(MAPA)の承認を受ける必要があり、計画の種類によっては、他の省庁の許認可も必要となる(法5709号)。
・外国人(個人・法人含む)によって取得或いは賃借される土地の総量は、各々の地方自治体の総面積の25%以下でなければならない。さらに、同一国籍の外国人(個人・法人含む)は、当該25%のうち、40%以上を取得或いは賃借することができない(法5709号、法8629号)。ただし、国家の開発計画に関連する優先的なプロジェクトの場合は、特別法によって規制以上の取得が認められる場合がある(法5709号)。
・この総量規制は、M&Aなど会社の組織変更によって所有名義・賃借人名義が変更される場合にも同様に適用される(法5709号)。
・上記の規制に違反して地方不動産が取得或いは賃借された場合、当該法律行為は無効である(法5709号)。
2010年の中頃以降、世界的な食料需要の増加を受け,外国資本傘下のブラジル国籍企業が,上記規制を越えた土地取得をする事例が見られるようになった。そこで、外国資本傘下のブラジル国籍企業による地方不動産取得規制の実質的な潜脱が問題となり、議論を呼んだ。
国家総弁護庁は、2010年8月、法令5709号に関して、外国資本支配下にあるブラジル企業を外国企業に課されたのと同様の規制の下に置く旨の見解を発表した(法令5709号については、憲法に抵触する可能性が指摘されていたが、国家総弁護庁は違憲ではない旨表明した。)。その後,国立植民農地改革院INCRAは,国家総弁護庁見解を反映した2011年12月6日付基本通達70号を公布した。
このように、地方不動産取得に対する外国資本規制は、厳格に適用される傾向にある。