ブラジル フランチャイズ法
我が国では、周知のとおり体系化されたフランチャイズ法は制定されておらず、「中小小売商業」の要件を満たすフランチャイジーに限り、中小小売商業振興法が適用されるにとどまる(あくまでも中小「小売」業にとどまり、サービス業のフランチャイズには適用されない)。
これに対して、ブラジルでは、フランチャイズに関する基本法(1994年法第8955号)が制定されている(以下「フランチャイズ法という。)。
フランチャイズ法は、フランチャイザーが、下記の事項を記載したフランチャイズ募集要領Franchise Offering Circular(FOC)を作成し、これをフランチャイジー希望者に提供するよう、求めている(第3条)。
- ① フランチャイザーの基本データ(会社名、法人登録番号CNliJ、商品名、住所等)
- ② 過去 2 年のフランチャイザーの財務諸表
- ③ 係争中の訴訟(フランチャイザーおよび親会社)
- ④ 国立工業所有権院(INliI)に登録された特許および登録商標
- ⑤ フランチャイザーが提供する活動の概要
- ⑥ フランチャイザーが業務上、直接関与する項目
- ⑦ 初期投資の金額
- ⑧ ロイヤルティおよびフランチャイズ料、その他の広告費の負担額
- ⑨ 支払条件
- ⑩ 定期的に発生する手数料
- ⑪ 過去 12 カ月に契約したフランチャイジーのリスト(氏名、住所、電話番号)
- ⑫ フランチャイジーに対し独占権的使用・営業を保証する範囲(知的財産および土地その他)
- ⑬ フランチャイザーからフランチャイジーに提供するもの。販売チェーンの監督と指導、訓練、支援、店舗のレイアウトや建築基準など
- ⑭ 競業避止義務など契約満了後の対応。その他フランチャイザーが禁止する具体的な情報の提示。
- ⑮ 契約書のモデルおよび附属書。
日本の中小小売商業振興法、公正取引委員会ガイドライン及び日本フランチャイズチェーン協会も類似の開示規制を置いているが、②財務諸表の開示、③係争中の訴訟の開示、⑪フランチャイジーのリスト開示を求める等の点において、ブラジルにおける開示規制の方が厳格である。
予想売上や予想収益についてはFOCに記載義務はない(わが国でも中小小売商業振興法には定めがなく、公正取引委員会のガイドラインレベルにとどまっている。)。しかしながら、実際には、多くのフランチャイザーが、フランチャイジー希望者に対して、市場調査の結果を提供している。なお損失補償の有無についても同様である。
フランチャイザーは、フランチャイジー希望者に対して、フランチャイズ契約締結の10日前にはFOCを提供しなければならない(第4条)。これによって、フランチャイジー希望者が契約前に最低限の経済分析を行う前提が提供されている。わが国では日本フランチャイズチェーン協会の開示制度レベルで7日間の熟慮期間を置くと規定されている。
以上のとおり、ブラジルでは、日本法と比較してより厳格な事前開示制度が整備されている。進出にあたっては日伯の相違につき、専門家に相談の上慎重な対応が必要となる。