イスラエルにおける会社の機関
令和5年7月更新
1.株主総会
(1) 株主総会の決議事項・権限
イスラエル会社法が株主総会の決議事項・権限として認めている主な事項は、下記のとおりです。
- 定款の変更
- 取締役の任命(但し、定款に別段の定めがある場合を除く)
- 社外取締役の任命
- 監査人の任命及び解任
- 登録株式資本の増減の承認
- 合併の承認
- 関連当事者間取引の承認
- 取締役会がその権限を行使できない場合であって、その権限行使が会社の適切な経営のために不可欠な場合、取締役会に代わってその権限を行使すること
(2) 株主総会の種類
イスラエル会社法は、定時株主総会(Annual General Meeting)と臨時株主総会(Special General Meeting)の2種類の株主総会を規定しています。
- (a) 定時株主総会
定時株主総会とは、毎年定期的に開催される株主総会を意味します。定時株主総会においては、毎会計年度の財務報告及び取締役会報告を決議することが求められています。
- 公開会社
公開会社においては、定時株主総会を毎年必ず開催しなければなりません。 - 非公開会社
非公開会社においては、監査人の選任に必要な場合を除き、定款でその開催を不要とする旨を規定することができます。この場合、株主又は取締役が定時株主総会の開催を請求しない限り、定時株主総会を開催する必要はありません。なお、定時株主総会を開催しない場合、株主名簿に記載された全株主に対して、財務報告書を送付しなければなりません。
- (b) 臨時株主総会
臨時株主総会とは、不定期に開催される株主総会です。
- 公開会社
公開会社においては、取締役会の決議があれば臨時株主総会を招集することができます。また、以下の者からの請求があった場合、臨時株主総会を招集しなければなりません。
- (ⅰ) 2名以上の取締役又は現任取締役の4分の1以上の取締役
- (ⅱ) 発行済株式資本の5%以上かつ議決権の1%以上を有する1名以上の株主
- (ⅲ) 議決権の5%以上を有する1名以上の株主
- 非公開会社
非公開会社においても、取締役会の決議があれば臨時株主総会を招集することができます。また、以下の者からの請求があった場合、臨時株主総会を招集しなければなりません。
- (ⅰ) 1名以上の取締役
- (ⅱ) 発行済株式資本の10%以上かつ議決権の1%以上を有する1名以上の株主
- (ⅲ) 議決権の10%以上を有する1名以上の株主
(3) 招集通知・招集場所
- (a) 招集通知
- 公開会社
公開会社における株主総会の招集通知は、別途大臣が定める方法により公表しなければなりません。また、定款に招集通知を送付しない旨の定めがある場合を除き、開催日から21日以上前までに株主名簿に記載されたすべての株主に対して送付しなければなりません。 - 非公開会社
非公開会社における株主総会の招集通知は、開催日から7日以上前までに当該株主総会への参加資格がある者に対して送付しなければなりません。但し、定款に別段の定めがある場合を除き、上記招集期間は45日を超えてはなりません。
なお、非公開会社においては、議決権を有する株主全員の一致によって決議されることを条件に、招集手続を省略することができます。
- (b) 開催場所
イスラエル会社法は、①イスラエルにおいてのみ株式が公開されている公開会社、及び②イスラエルの証券取引所においてのみ株式が取引されている公開会社については、その株主総会をイスラエルにおいて開催しなければならない旨規定しています。
なお、非公開会社においては、定款に別段の定めがない限り、オンライン(総会に参加する株主全員が同時に相互の声を聴くことができるような通信手段)での株主総会の開催が認められています。
(4) 定足数・議決権・議決権の行使・可決要件
- (a) 定足数
株主総会の定足数は、①総会開始の定刻から30分以内に、②議決権の25%以上を有する株主2名以上の出席とされています。 - (b) 議決権
株主総会における株主の議決権は、定款に別段の定めがある場合を除き、1株につき1議決権となります。 - (c) 議決権の行使
- 公開会社
公開会社においては、株主本人又はその代理人による議決権行使が認められています。また、取締役の任命及び解任、関連当事者間取引の承認、及び合併の承認等、一定の株主総会決議事項については、書面(voting paper)による議決権の行使が認められています。 - 非公開会社
非公開会社についても、株主本人又はその代理人により議決権行使が認められています(但し、定款に別段の定めがある場合を除く)。また、定款にその旨の定めがある場合には、書面による議決権の行使も認められています。
- (d) 可決要件
法令又は定款に別段の定めがない限り、株主総会決議は普通多数決によって可決されます。
2.取締役会
(1) 取締役会の権限及び義務・責任
イスラエル会社法は、取締役会の権限及び義務・責任について、主に下記のとおり規定しています。
権限
- (ⅰ) 社債発行の決議
- (ⅱ) 登録株式資本を上限とする株式及び株式に転換できる有価証券の割当
- (ⅲ) 株式配当の決定
なお、他の機関に付与されていない権限を定款によって取締役会に付与することが認められています。
義務
- (ⅰ) 会社の方針の概要の決定、及びその枠組内でゼネラルマネージャーの権限の行使及び行動の監督
- (ⅱ) 会社の行動計画、資金調達の原則、及び当該計画間の優先順位の決定
- (ⅲ) 会社の財務状況の調査、及び会社の与信限度額の設定
- (ⅳ) 会社の組織構造及び賃金方針の決定
- (ⅴ) 財務報告書の作成及び認証
- (ⅵ) 会社の業務状況及び事業活動の成果につき定時株主総会への報告
- (ⅶ) ゼネラルマネージャーの任命及び解任
(2) 取締役数
イスラエル会社法は、取締役会の構成員たる取締役の数について、定款に規定しなければならない旨を定めていますが、定款においてはそのような取締役の最低数と最高数を規定すれば足ります。
非公開会社においては、取締役数を1名とすることも認められています。他方、公開会社においては、2名以上の社外取締役(Outside Director)を任命しなければなりません。
(3) 取締役会の招集・招集通知・開催方法
- (a) 取締役会の招集
取締役会は、必要に応じて招集することができますが、一定の要件を充たす場合には取締役会を招集しなければなりません。なお、非公開会社においては年1回以上、公開会社においては少なくとも3ヶ月に1回以上の招集・開催が求められています。
- (b) 招集通知
定款に招集期間の定めがない限り、招集通知は取締役会開催日から合理的な期間前に取締役全員に送付しなければなりません。なお、定款で禁止されている場合を除き、当該決議事項について決議に参加して議決権を行使できる取締役全員の同意がある場合には、招集通知を省略して決議をすることができます。
招集通知には、取締役会の開催日、開催場所、及び議案に関するすべての事項について合理的に詳細な説明を記載しなければなりません。
- (c) 開催方法
定款に別段の定めがない限り、オンライン(取締役会に参加する取締役全員が同時に相互の声を聴くことができるような通信手段)での取締役会の開催が認められています。
(4) 定足数・議決権・可決要件
- (a) 定足数
取締役会の定足数は、定款に別段の定めがない限り取締役の過半数の出席とされています。 - (b) 議決権
定款に別段の定めがない限り、取締役会において各取締役は一つの議決権を有しています。 - (c) 可決要件
取締役会の決議は、普通多数決で可決されます。可否同数の場合、定款に別段の定めがない限り、議長にキャスティング・ボートが認められています。
(5) 取締役会委員会(Committees of the Board of Directors)
イスラエル会社法は取締役会に対して、その委員会を設置し、取締役会の委員を任命することを認めています。
取締役会委員会の決議又は行為は、定款に別段の定めがない限り、取締役会が行った決議又は行為とみなされますが、会社の方針の決定、財務報告書の承認等の一定の事項については、勧告のみを目的とする場合を除き、委員会に取締役会の権限を委任することは認められていません。
(6) 監査委員会(Audit Committee)
公開会社の取締役会は、監査委員会を設置し、取締役の中から3名以上の監査委員を任命しなければなりません。また、社外取締役の全員を監査委員としなければなりません。
監査委員会は、監査人や内部監査人との協議等により、会社の経営管理上の問題を発見し、その是正手段を取締役会に提案する等の役割が求められています。そのような役割から、監査委員には公正・中立性が求められ、取締役会の議長、会社と雇用関係にある取締役等は監査委員になれないとされています。
なお、非公開会社においては、監査委員会の設置は任意となります。
3.ゼネラルマネージャー(General Manager)
(1) ゼネラルマネージャーの権限及び義務・責任
イスラエル会社法は、ゼネラルマネージャーの権限及び義務・責任について、主に下記のとおり規定しています。
権限
イスラエル会社法又は定款によって会社の他の機関に付与されていない全ての経営上及び業務執行上の権限(但し、取締役会の監督に服する)
義務・責任
- (ⅰ) 取締役会が決定した方針の範囲内で会社の日常的な業務運営を行う責任
- (ⅱ) 所定の重要事項について取締役会議長に報告する義務
公開会社においては、ゼネラルマネージャーを任命することが義務付けられています。他方で、非公開会社においては、ゼネラルマネージャーの任命は任意となります。
4.監査人(Auditor)
イスラエル会社法は、会社に対して監査人の任命を義務付けています。監査人は、毎会計年度の財務報告書を監査し、それに対する意見を表明することが求められています。
監査人は、定時株主総会毎に任命され、次の定時株主総会が終了するまでがその任期となります。但し、定款にその旨の定めがある場合、上記任期より長い期間を任期とすることができます。
なお、定款に定時株主総会の開催を不要とする旨を規定している非公開会社においては、監査人の任期は、1回の監査が終了するまでとされています。但し、定款にその旨の規定がある場合には、監査人の任期を3回の監査が終了するまでとすることができます。
以 上