ラオスにおける解雇規制
2016年8月8日更新
ラオスにおける雇用関係を規律する一般的な法令として、労働法(43/NA、2013年12月24日。以下「新労働法」という。)が存在している。同法は、旧労働法(06/NA、2006年12月27日)に代わるものとして、2014 年10 月14 日に公布された。解雇規制に関しては、新労働法は、旧労働法の要件を一部緩和している。以下では、ラオスにおいて使用者側が期限の定めのない雇用契約を解除する場合に、新労働法上必要とされている一般的な要件・手続を紹介する。
- 使用者側が期限の定めのない雇用契約を解除する場合の一般的な要件・手続
- 1. 事前通知
- 2. 解雇理由
- (i) 当該労働者が専門的技能を欠いているか、又は健康状態が良好でなく医師の診断書を有しており、当該労働者の技能・健康状態にとってより適切な業務に従事することが許可された後であっても、当該労働者がなお仕事に従事することができない場合
- (ii) 操業環境を改善するために使用者が労働者の数を削減する必要があると判断し、労働組合又は労働者代表又は過半数の労働者と協議をした後、労働監督機関へ報告した場合
- 3. 不当解雇事由に該当しないこと
- (i) 十分な理由なく雇用契約を終了した場合
- (ii) 使用者がその権利を直接又は間接に濫用して雇用契約を終了した場合、又は当該労働者が就業できなくなるような労働者の基本的権利を侵害した場合
- (iii) 労働者又は労働者代表からの抗議を受けた後に使用者が雇用契約に違反し、当該状況を解決又は変更せず、これにより当該労働者を辞職させた場合
- 4. 労働監督機関の要許可事由に該当しないこと
- (i) 妊婦又は1歳未満の子供がいる女性労働者
- (ii) 治療中又はリハビリ中で医師の診断書を有する労働者
- (iii) 労働者代表又は労働組合の長である労働者
- (iv) 法的手続に関与し、留置され又は判決の言い渡しを待つ労働者
- (v) 負傷しその治療中で医師の診断書を有するか、又は近時災害を経験した労働者
- (vi) 年次有給休暇中又は使用者の許可を得て休暇中の労働者
- (vii) 使用者により割当てられた他の職場で業務を遂行している労働者
- (viii) 当該労働者の職場における労使紛争に関して、使用者に対する請求手続若しくは法的手続中又は労働法に関して政府関係者に協力している労働者
- (i) 故意により使用者に損害を被らせた場合
- (ii) 使用者から警告を受けた後、就業規則又は雇用契約に違反した場合
- (iii) 理由なく4日連続して職務を怠った場合
- (iv) 裁判所から禁固刑の言い渡しを受けた等の場合
- (v) 他の労働者特に女性労働者の権利の侵害し、既に警告を受けていた場合
- 5. 解雇手当の支払
ラオスにおいては、使用者側が期限の定めのない雇用契約を解除する場合、1.解雇の事前通知及び2.一定の解雇理由が必要であり、かつ、原則として3.不当解雇事由及び4.労働監督機関の許可が必要となる事由に該当せず、5.解雇手当を支払う必要がある。以下、順に検討する。
使用者が期間の定めのない雇用契約を解除する場合、当該労働者が肉体労働に従事する場合は少なくとも30日前に、精神労働に従事する場合には少なくとも45日前に、使用者は、当該労働者に対して通知をしなければならない。
(1) 使用者は、以下の理由に基づく場合には、雇用契約を解除することができる。
この場合、上記1.に記載した事前通知については、書面によって、経費削減の理由の説明を含める必要がある。
(2) 新労働法は、法定されている解雇理由(上記(1)(i)及び(ii))以外の理由であっても、雇用契約、就業規則又は使用者・労働者間の合意において当該解雇理由が定められている場合には、これに基づく雇用契約の解除を許容していると解される。
以下のいずれかに該当する場合には、不当な雇用契約の終了に該当し、この場合、労働者は従前の業務への復職又はその他の適切な業務の割り当てを要求する権利を有する。
(1) 以下のいずれかに該当する場合には、原則として雇用契約を終了することはできず、解雇を意図する使用者は、労働監督機関の許可を取得しなければならない。
(2) 上記(1)に該当する場合であっても、労働者に帰責事由が認められる以下のいずれかに該当する場合には、使用者は、労働監督機関の許可なく雇用契約を解除することができる。
ただし、本4.(2)に従って雇用契約が解除された場合、当該労働者は、賃金を全額受け取る権利を有する。
(1) 上記2.(1)に記載した理由に基づいて雇用契約を解除する場合には、使用者は、労働者に対して、当該労働者の契約終了直前の給与又は賃金の10%相当額に当該労働者が勤続した月数を乗じた額の解雇手当を原則として支払う必要がある。
(2) 上記3.に記載した不当な雇用契約の終了に該当する場合に、使用者が支払わなければならない解雇手当の額は、当該労働者の契約終了直前の給与又は賃金の15%相当額に当該労働者が勤続した月数を乗じた額となる。
(3) 新労働法に法定されているいない理由に基づいて解雇する場合には、雇用契約、就業規則又は使用者・労働者間の合意に従って、解雇手当を支払わなければならない。
(4) ただし、上記5.(1)、(2)及び(3)にかかわらず、労働者に帰責事由が認められる4.(2)のいずれかに該当して雇用契約を解除する場合には、使用者は、解雇手当を支払う必要はない。
以上