ラオスからの事業の撤退

2016年8月8日更新

 ラオスにおいて現地法人の既存の事業を終結し、その法人格を消滅させる形で撤退する場合には、原則として2013年に改正された改正企業法(ວ່າດ້ວຍ ວິສາຫະກິດ (ສະບັບປັບປຸງ) ລົງທຶນ ສະບັບເລກທີ 46/ສພຊ ລົງວັນ ທີ 26 ທັນວາ 2013。英訳はEnterprise Law (Amended)。以下「改正企業法」という。)に定められた解散・清算に関する規定 に沿って手続を進めることになる。本稿では、現地法人の一形態であり実務上用いられることの多い有限(非公開)会社(ລິສັດຈ າກັດ。英訳はLimited Company。以下「有限会社」という。)の一般的な清算手続の概要を、改正企業法に基づき解説する。なお、企業の破産の場合の清算手続については、企業倒産法(06/NA、1994年10月14日)に基づく手続となる。これについては、本ウェブサイト国際コンテンツ内の「ラオスにおける倒産処理」を参照されたい。

  1. 1. 会社の解散
  2.  有限会社は、(1)法定事由又は(2)裁判所の決定により、解散する。

     主な(1)法定の解散事由は、以下のとおりである。

    1. (i) 定款で定められた解散事由の発生
    2. (ii) 株主総会の解散決議
    3. (iii) 破産
    4. (iv) 会社に関する登記の内容に誤りがあり、これが是正されない場合
    5. (v) 会社が設立登記から90日以内に事業を開始せず、又は、12ヶ月間連続して合理的な理由なく業務を停止して納税せず、登記官から呼出通知を受けても10営業日以内に出頭しない場合

     また、取締役又は株主は、以下のいずれかの理由に基づいて、(2)会社の解散の決定を裁判所に請求することができる。

    1. (i) 設立に関する企業法の規定の違反
    2. (ii) 定款又は設立(合弁)契約書の違反
    3. (iii) 会社が事業運営により継続して損失を生じ、回復が困難であること
    4. (iv) 不可抗力事由により会社の事業運営の継続ができないこと
    5. (v) 有限会社の株主が1名又は30名を超えたこと

     上記の(1)法定事由が発生した日又は(2)裁判所の決定の日から10営業日以内に、当該会社の仮解散の登記がされなければならない。

     会社の解散は、以下の効果を有する。

    1. (i) 株主の権利の一時停止(ただし、株主の出資の未履行部分の払込義務は停止しない)
    2. (ii) 会社の債務の支払の一時停止、及び、支払期限前の会社の債務の期限の到来
    3. (iii) 事業を実施する会社の権利の喪失。ただし、会社の法人格は、清算業務の遂行及び清算のために留保された業務の完了のため、清算終了の通知及び会社登記の抹消までの間、存続する。
  3. 2. 清算手続の選択
  4.  有限会社の株主は、(a) 会社の破産、(b) 裁判所の命令又は(c) 株主が1名となり若しくは30名を超えた場合を除き、定款の定め又は株主間の合意に従い資産の分配又は清算の方法を選択することができる。なお、(a)会社の破産の場合の清算処理については、本ウェブサイト国際コンテンツ「ラオスにおける倒産処理」内の6.破産宣告後の破産・清算手続を参照されたい。

  5. 3. 清算人の選任
  6.  有限会社の清算人は、定款の定めに従って選任される。定款の定めがない場合、株主総会の出席株主の総議決権の3分の2以上の賛成により選任される。かかる決議が成立しない場合、裁判所が、清算人を選任する。また、上記2.(a)(b)(c)の事由による解散の場合、清算人は、裁判所によってのみ選任することができる。清算人の解任は、その選任と同じ手続により行うことができる。

     清算人の選任・解任及び清算人の義務の終了は、当該事由が生じた日から10日営業日以内に公示しなければならない。

    4. 清算手続

    清算人は、以下の清算に関する手続について、権利を有し、義務を負う。

    1. (i) 解散事由が生じた日から10営業日以内における、債権者に対する会社の解散についての書面による通知、及び、マスメディアを通じた公示
    2. (ii) 資産の回収及び資産目録・貸借対照表の作成
    3. (iii) 清算により留保されている事項の完了
    4. (iv) 清算義務の履行に対する報酬の受領
    5. (v) 会社財産の保護、会社の債権を完全に回収するための請求、会社財産の売却・移転のために必要な手段の実施
    6. (vi) 監査役への貸借対照表の提出
    7. (vii) 関連する債権者、株主、清算人を指名した裁判所に対する、回収した財産・業務の結果についての報告
    8. (viii) 最低半年に一回の頻度での債権者株主間会議の開催
    9. (ix) 債権者株主間会議で割当てられた業務の実施
    10. (x) 四半期に一回、登記官に対する貸借対照表の提出
    11. (xi) 債権者に対する債務の返済、株主に対する残余財産の分配
      1. ・ 債務の返済及び資産の分配の優先順位は以下のとおりである。
      2.  ① 従業員の給与
      3.  ② 国に対する一定の債務
      4.  ③ 担保付債務
      5.  ④ 無担保債務
      6. ・ 上記の会社債権者の債務を完済した後の残余財産は、株主に分配される。
    12. (xii) 株主を代理した調停手続の遂行又は裁判所における訴訟の提起
    13. (xiii) 会社資産により会社債務の完済ができないことが判明した場合の、株主等への報告及び清算人による破産手続の申立て
  7. 5. 清算完了後の手続
  8.  清算手続の完了後、清算人は以下の業務を行う。

    1. (i) 資産の分配および債務の弁済についての報告書及び要約を作成し、採択のために速やかに債権者株主間会議に提出する。
    2. (ii) 資産の分配及び債務の弁済について、その完了の日から10営業日以内に公示する。
    3. (iii) 全ての清算に関する書面を、関連する株主及び会社の清算完了の登記を行う登記官に引き渡す。
    4.  上記(ii)の公示の日から10営業日以内に担当する登記官に対して会社の恒久的な解散の通知を行う。登記官は、当該会社の名称を、会社登記簿から抹消し、抹消の日から10営業日以内に公示する。

       当該会社の法人格は、会社の恒久的な解散についての裁判所の決定の日に消滅する。

    以上