International Business Company Actの2016年改正について
2016年7月26日、セーシェル共和国のオフショア法人として用いられることが多かったInternational Business Company(以下「IBC」という。)を規律する新法(以下「新IBC法」という。)が議会で承認され、同年11月1日より施行された。以下では、新IBC法における主な変更点を、担当省庁のプレスリリース等に従って紹介する。
- 1. IBCが禁止される事業活動の拡大
- 2. 受益者名簿の備置き
- (i) 受益者の氏名、居住地、生年月日及び国籍
- (ii) 各受益者の受益権及びその保有形態の詳細
- (iii) 受益者となった日
- (iv) 受益者でなくなった日
- 3. 取締役名簿の登記
- (i) 取締役の氏名及び住所
- (ii) 取締役に任命された日
- (iii) 取締役でなくなった日
- (iv) その他規則において定められた事項
- 4. 無記名株式の発行禁止の明文化
- 5. セーシェル政府発行証券及び事務所賃借権等の保有の禁止
新IBC法は、IBCが実施することができない事業活動の範囲を、①証券事業、②ミューチュアル・ファンド事業及び③ギャンブル事業まで拡張した。ただし、これらの事業活動についてライセンスを取得するか、又は、IBCが当該事業活動を行う国の法令に基づき適法に実施できる場合には、これらの事業活動を行うことが可能である(①③は、セーシェル国外における事業実施に限り可能)。
全てのIBC(上場されたIBC等の一定の例外を除く。)は、セーシェル共和国内のIBCの登記住所において、受益者名簿を備え置かなければならない。受益者名簿の記載事項の概要は、以下のとおりである。
新IBC法は、旧法では不要であったIBCの取締役名簿の写しを登記官に提出する義務を規定した。取締役名簿の記載事項の概要は、以下のとおりである。
新IBC法に基づいて設立されたIBCは取締役の任命の日から30日以内に、既存のIBCは新IBC法の施行日から12ヶ月以内に、当局に対して、取締役名簿の写しを登記のために提出しなければならない。かかる取締役名簿の写しは、新IBC法の施行日から2年後には公に開示される予定である。
新IBC法は、IBCが無記名株式を発行することを禁止する旨を明文化した。
新IBC法の下では、IBCは、セーシェル共和国政府又はセーシェル中央銀行が発行する債券、短期国債その他の証券を保有することができない。また、従前はIBCに認められていた、その構成員と連絡を取るための事務所、又は、会社の帳簿を備置く事務所として使用するための不動産の賃借権を保有することは認められなくなった。
なお、新IBC法に関しては、同法に対する産業界からのコメントを踏まえて、新たなガイドラインが策定される見通しであり、その動向・内容についても注意をしておく必要があると思われる。