シンガポールにおける外資規制
2022年5月更新
ASEAN各国においては、国内事業への外国資本算入について、外資の出資比率、出資形態、及び許認可の取得等の制限を定める一般的な法令が「投資法」等の名称で定められている場合が多いです。しかし、シンガポールにおいては、このような外資規制を包括的に定める一般的な法令は存在しません。
ただし、特定の業種においては、その業種を規制する個別法令によって、外国資本による株式所有の制限、及び規制当局からの許認可の事前取得等が事業を開始するための要件として定められています。
以下、シンガポールにおける主な外国資本規制について列挙します。
■ 放送事業
規制当局 |
情報通信メディア開発庁(IMDA:Info-communications Media Development Authority) |
関連法令 |
Broadcasting Act, 1994 |
ライセンス |
事業を行うにはIMDAから付与されるライセンスが必要 以下の場合、大臣の別途承認がない限りライセンスは付与されない ■ 外国資本が当該会社又は親会社の49%以上の株式を保有する、又は49%以上の議決権を支配する地位にある場合 ■ 当該会社又は親会社の指揮、支配、又は経営権を有する過半数を超える者が外国資本によって任命、もしくは外国資本の指示、命令、又は要望に従って行動する慣習又は義務がある場合 |
主な規制 |
以下の場合、大臣/IMDAの事前承認が必要 ■ 放送サービスへの資金提供目的のための外国資本による融資 ■ CEO、又は取締役の半数以上をシンガポール国民以外の者から選任する場合 |
■ 新聞事業等
規制当局 |
情報通信メディア開発庁(IMDA:Info-communications Media Development Authority) |
関連法令 |
Newspaper and Printing Presses Act, 1974 |
ライセンス |
事業を行うには大臣から付与されるライセンスが必要 |
主な外資規制 |
以下の場合、大臣/IMDAの事前承認が必要 ■ 取締役をシンガポール国民以外の者から選任する場合 ■ シンガポール国民のみ保有が認められる種類株式(Management Share:追加の議決権を有する株式)を外国資本が取得・保有する場合 ■ 真正な商業目的のための外国資本による融資 |
■ 銀行業
規制当局 |
シンガポール通貨庁(MAS:The Monetary Authority of Singapore) |
関連法令 |
■ Banking Act, 1970 ■ Monetary Authority of Singapore Act, 1970 ■ Finance Companies Act, 1967等 |
ライセンス |
事業を行うにはMASから付与されるライセンスが必要 ■ 銀行の業態によってライセンスが異なる(フルバンク、適格フルバンク、ホールセールバンク、マーチャントバンク等) |
主な外資規制 |
■ 通常のフルバンクライセンスを保有する外資系銀行は、一定数の支店及びATMの運営に限られる(但し、適格フルバンクの特権を付与された外資系銀行は、25拠点までの運営が可能となり、またローカル銀行のATMネットワークの共同利用が可能となる) |
■ 法律サービス
規制当局 |
法律サービス規制庁(LSRA:The Legal Services Regulatory Authority) |
関連法令 |
■ Legal Profession Act, 1966 |
ライセンス |
外国法律事務所の開設には、ライセンスを取得する必要 |
主な外資規制 |
■ 外国法務ライセンス(Foreign Law Practice License)は、外国法及び国際法の分野に限定され、国際商事仲裁を除きシンガポール法の分野については法律サービス提供できない。 ■ 但し、Joint Law Venture License又はFormal Law Alliance Licenseを取得し現地法律事務所と提携すれば、一定のシンガポール法の分野について法律サービスを提供することができる。 ■ また、適格外国法務ライセンス(Qualifying Foreign Law Practice License)を取得すれば、単独で一定のシンガポール法の分野について法律サービスを提供することができる。 |
なお、法令上は外国資本と内国資本及びシンガポール国民と外国人を明確に区別していない場合であっても、ライセンス付与や政府承認の際に、外国資本や外国人が実質上制限される可能性がある点には注意が必要です。
以 上