タイにおける現地法人の運営
2016年12月13日更新
現在、タイでは日本の会社法に相当する法律として、民商法第22編「パートナーシップ及び会社」、また、公開会社の場合は公開株式会社法規制にも服する。以下では、実務上用いられることが多い非公開株式会社の形態を念頭に置き、機関の概要を説明する。
第1 株主総会
- 1 株主総会の種類
- 2 株主総会の招集
- 3 株主総会決議の方法
- 4 株主総会の権限(株主総会決議事項)
(1) 定時株主総会
会社は、設立(会社登記日)後6カ月以内に、第1回定時株主総会を開催しなければならない。また、第2回目以降は決算日後4カ月以内、かつ、直前の定時株主総会から12カ月以内に開催しなければならない。
(2) 臨時株主総会
定時株主総会とは別に、必要に応じて臨時株主総会が招集される。
(1) 招集権者
取締役は必要に応じていつでも臨時株主総会を招集することができる。もっとも、会社が有する資産の半分を失った場合、当該損失を株主に知らせるために招集する義務を負う。また、合計して発行済株式の20%を保有する株主は、議題を明示した上で、取締役会に対して書面で株主総会の招集を要求することができ、請求後30日以内に株主総会が招集されなかった場合には、自ら招集することができる。
(2) 招集手続
普通決議の場合は株主総会開催日の7日以上前まで、特別決議を行う場合は14日以上前までに、それぞれ招集通知を株主名簿に記載された住所に郵送するとともに、新聞により公告する必要がある。
(1) 定足数
定款に別段の定めがある場合を除き、株主総会の定足数は総資本の4分の1以上に相当する株主の出席である。
(2) 議決権の行使方法
ア 挙手による場合
株主総会の決議は原則として出席者の挙手により行われ、1株主1議決権の原則が適用される。
イ 投票による場合
2名以上の株主から要求があった場合には、投票により決議が行われる。その場合、1株主1議決権の原則が適用される。
(3) 決議要件
普通決議は出席株主の過半数の賛成により行われる。また、特別決議は出席株主の4分の3以上の賛成により行われる。
株主総会決議事項の例としては下記が挙げられる。
・定款変更
・株式資本に関する事項(新株発行、減資等)
・取締役の選任及び解任
・監査役の選任及び解任
・財務書類の承認
・会社の解散、合併
第2 取締役
- 1 取締役の員数及び居住要件
- 2 選任及び解任
- 3 任期
- 4 取締役の権限及び義務
非公開会社では取締役の員数及び居住要件に関する規定がない。従って、最低1名以上いれば足り、国外居住者が取締役となることができる。もっとも、実務上、各種手続をタイ国内で行う必要があるため、タイ国内に住居を有している者が取締役となることが多い。
それ以外の取締役には、非居住者が就任することもできる。
非公開会社において、取締役の選任及び解任は、いずれも株主総会の普通決議によって行われる。
任期の概念はないものの、定時株主総会ごとに取締役の3分の1が辞任しなければならないとされているため、3年で全員が改選されることになり、在任期間は必然的に3年以下となる。
各取締役の権限は定款等によって比較的自由に設定することができる。他方で、取締役はその業務執行につき善良注意義務を負い、取締役がこれらの義務に違反した場合、会社は取締役に対して損害賠償請求を行うことができる。特に、①株主による出資金の支払いの確保、②法令上必要とされる会計書類及び書類の保管・管理、③法令上必要とされる配当の実施、④株主総会決議の決定に基づく監督等について、他の取締役と連帯して責任を負う旨が定められている。
もっとも、取締役の行為が株主総会の承認を受けていた場合、取締役は会社及び当該株主総会で賛成票を投じた株主に対して責任を負わないため、株主数が少数にとどまる私的会社においてはリスクヘッジという観点から敢えて株主総会の承認手続を経る会社も存在する。
第3 取締役会
- 1 取締役会の運営(招集・開催・決議等)
- 2 取締役会の決議事項
取締役会はいつでも取締役会を招集することができる。取締役会の開催は現実に行われることが必要であり、書面決議は認められていない。定足数は定款で自由に定めることができるが、別段の定めがない場合は3名となる。決議要件は過半数以上であり、可否同数の場合は議長が決定する。
取締役会は、法令又は定款が株主総会決議事項と定めている事項を除き、会社の日常の重要事項の決定を行う。もっとも、取締役会は取締役又は取締役で構成される委員会にその権限の委譲が可能である。
第4 会計監査人
会計監査人は会社の計算書類の監査を行う機関であり、全ての会社が会計監査人を設置しなければならない。会計監査人は定時株主総会で選任されるが、就任にはタイ国の公認会計士資格を有していることを要する。会計監査人には、監査を実施するために会計帳簿等の閲覧権限や、当該会社の取締役及び従業員等に対する調査権限が与えられている。
以上