インド 会社法(機関①)
2024年4月更新
1.株主総会
(1)株主総会の種類・開催時期・開催日時・開催場所
インド会社法は、定時株主総会と臨時株主総会の2種類の株主総会を規定しています。
- (a) 定時株主総会(AGM: Annual General Meeting)
定時株主総会とは、毎年1回定期的に開催される株主総会であり、総会においては、毎会計年度の決算報告及び監査人の選任等が決議されます。
- (ⅰ) 開催時期(法96条1項)
一人会社を除くすべての会社は、毎年定時株主総会を開催しなければなりません。
設立後最初の定時株主総会は、当該会社の最初の会計年度の末日から9ヶ月以内に開催しなければならず、それ以降の定時株主総会は各会計年度の末日から6ヶ月以内に開催しなければなりません。
なお、定時株主総会の間隔は15ヶ月以内とされています。 - (ⅱ) 開催日時・場所(法96条2項)
定時株主総会は、原則として、国家の休日(National Holiday)ではない日の営業時間内(午前9時から午後6時)に、会社の登記事務所、もしくは会社の登記事務所がある市町村内のその他の場所において開催されなければなりません。
但し、非上場会社においては、全株主による事前の書面又は電子的方法による同意があれば、インド国内の任意の場所で定時株主総会を開催することができます。
- (b) 臨時株主総会(EGM: Extraordinary General Meeting)
臨時株主総会とは、定時株主総会以外の株主総会であり、臨時株主総会においては、開催の目的とされた事項につき決議されます。
- (ⅰ) 招集
臨時株主総会は、取締役会が適当と見做す場合はいつでもこれを招集することができます(法第100条1項)。
また、議決権行使可能な払込株式資本の10分の1以上の株式を保有する株式会社の株主らによる招集請求があった場合、取締役会は、臨時株主総会を招集しなければなりません(法第100条2項)。かかる招集請求があったにもかかわらず取締役会が所定の期間内に臨時株主総会を招集しない場合、上記招集請求者自身が株主総会を招集・開催することができます(法第100条4項)。 - (ⅱ) 開催日時・場所
臨時株主総会の開催日時については、定時株主総会のようにこれを制限する規定はありません。
他方、開催場所については、取締役会によって招集・開催される場合及び所定の要件を充たす株主によって招集・開催される場合のいずれも、インド国内の任意の場所で開催されなければなりません。但し、インド国外で設立された会社のインドの完全子会社の場合は、インド国外で開催することも可能です(法第100条1項及び5項)。
(2)招集手続
株主総会は、招集期間を21日以上とする書面または電子的方法による招集通知を、株主、監査人、及び取締役に送付する方法で招集されなければなりません(法第101条1項・3項)。
但し、①定時株主総会の場合、当該株主総会において行使可能な議決権を有する株主の95%以上の書面又は電子的方法による同意がある場合、また②その他の株主総会の場合、議決権を有する株主の過半数、且つ当該株主総会において行使可能な議決権を有する払込済株主資本の95%以上による同意がある場合、招集期間を短縮することができます(法第101条1項但書)。もっとも、法は招集期間の短縮のみを認めており、招集通知自体の省略は認めていない点には注意が必要です。
(3)定足数
株主総会の定足数は、会社の附属定款が法定の定足数よりも多い数を定足数とする旨を定めていない限り、以下のとおりとなります(法第103条1項)。
|
公開会社 |
非公開会社 |
---|---|---|
株主総会開催日現在の株主数が1,000名以下の場合 |
5名 |
2名 |
株主総会開催日現在の株主数が1,000名超5,000名以下の場合 |
15名 |
|
株主総会開催日現在の株主数が5,000名超の場合 |
30名 |
(4)議決権の行使
- (a) 挙手による場合(一株主一議決権)
株主総会においては、原則として株主による挙手によって決議されます(法第107条1項)。挙手による決議の場合、その持株数に関係なく各株主が一議決権を有する(一株主一議決権)ことになります。 - (b) 投票による場合(一株一議決権)
但し、議長の自らの発議によって投票による決議が命じられた場合は、挙手ではなく投票によって決議されることになります(法第109条1項)。
また、総議決権の10%以上又は払込済株式資本額が50万ルピー以上(又は別途規則で規定されるより高い額)の株式を有する株主によって投票による決議が請求された場合、議長は投票による決議を命じなければなりません(法第109条1項)。
その他、決議が電子的方法によって行われる場合も同様に投票によって決議されることになります(法第107条1項)。
投票による決議の場合、その持株数に応じ一株あたり一議決権を有する(一株一議決権)ことになります。
(5)代理人(Proxy)・代表者(Representative)
株主総会に出席し議決権を行使することができる株主は、自己に代わって株主総会に出席し議決権を行使する代理人(Proxy)を選任することが認められています(法第105条1項)。なお、代理人には、当該株主総会での発言権が認められていない(法第105条1項但書)ことには注意が必要です。
また、法人が株主の場合、当該法人はその取締役会等の決議により、その代表者(Representative)として相当と思料する者に対して議決権行使の権限を授権することができます(法第113条1項)。このように議決権行使権限を授権された代表者は、当該法人と同一の権限を行使することができます(法第113条2項)。
(6)普通決議と特別決議
インド会社法においても、株主総会での決議要件として、普通決議と特別決議が規定されています。
- (a) 普通決議
当該決議に賛成の票数がこれに反対する票数を上回ることによって可決されること(すなわち出席株主の過半数の賛成があった場合)を決議要件とする場合、当該決議は普通決議となります(法第114条1項) - (b) 特別決議
当該決議に賛成の票数がこれに反対する票数の3倍以上となることによって可決されること(すなわち出席株主の4分の3以上の賛成があった場合)を決議要件とする場合、当該決議は特別決議となります(法第114条2項)。
以上