インド 会社法(機関③)

2024年6月更新

1.取締役会

(1)開催の頻度

すべての会社は、設立日から30日以内に第1回取締役会を開催しなければなりません。また、その後の取締役会は、連続する2回の取締役会の間隔が120日以内であり、かつ毎年度4回以上開催しなければならないとされています(法第173条1項)。

(2)開催方法

取締役会の開催方法として、インド会社法は、取締役が実際に出席して開催する通常の方法の他、取締役がTV会議システム又はその他の視聴覚手段により遠隔的に出席する方法での開催を認めています(法第173条2項)。

なお、TV会議システム又はその他の視聴覚手段とは、会議に参加するすべての者が、仲介者を介することなく相互に同時通信し、会議に効果的に参加することを可能にする視聴覚的電子通信設備を意味するものと定められています(2014年会社「取締役会及びその権限」規則第3条(Explanation))。また、TV会議システム等により取締役会を開催する場合、その議事のすべてを録音し、録音データを保管することが求められています(同規則第3条2項(d))。よって、多くの会社は録画機能を備えたWEB会議システムであるMicrosoft Teams、Zoom、Webex等を利用されているようです。

上記の他、インド会社法は、いわゆる書面決議についても、一定の手続的要件に従うことを条件に認めています。具体的には、取締役決議案(必要な資料がある場合は当該資料と併せて)をすべての取締役のインド国内の登録住所宛に、手交、郵送、又は別途定める電子的方法によって回覧され、当該決議について議決権を有する取締役の過半数によって承認された場合、当該決議案は取締役会において正式に可決されたものと見做されます(法第175条1項)。但し、取締役総数の3分の1以上の取締役が、このような書面による決議案を実際の取締役会で決議すべきであると要求した場合、議長は当該決議案を取締役会に付議しなければならないとされています(同条項但書)。

(3)招集手続

取締役会は、招集期間を7日以上とする書面による招集通知を、すべての取締役の登録住所に対して送付する方法で招集しなければなりません。送付の具体的方法として、手渡し、郵送、又は電子的方法によって送付する方法が認められています(法第173条3項)。

もっとも、招集期間については、緊急の議題の場合、独立取締役がいる場合はその1名以上が出席することを条件に、短縮することができます(同条項但書1)。また、独立取締役が当該取締役会に出席しない場合は、当該取締役会における決議内容が全取締役に回覧され、独立取締役がいる場合はその1名以上によってその決議内容が追認された場合に、これを短縮することができます(同条項但書2)。

なお、上記の規定に基づいて招集通知を送付する義務のある役員が招集通知の送付を怠った場合、罰金刑が科される可能性があることには注意が必要です(法第173条4項)。

(4)定足数

取締役会においては、原則として、全取締役数の3分の1又は2名のうちいずれか多い数がその定足数とされています(法第174条1項)。なお、定足数の算定においては、TV会議システム等によって取締役会に出席した取締役もカウントされます。

但し、利益相反取引につき決議する取締役会(法第184条2項)において、利害関係を有する取締役の数が全取締役数の3分の2以上となる場合、利害関係を有する取締役以外の取締役が2名以上出席すれば定足数を充たすとされています(法第174条3項)。

なお、定足数を充たさないために取締役会を開催できない場合、当該会社の附属定款に別段の定めがない限り、取締役会は、翌週の同じ曜日(同日が国民の休日に当たる場合はその翌日)、同じ場所、同じ時間に自動的に延期されることになります(法第174条4項)。

(5)決議要件

法は取締役会の決議要件について特に規定していませんが、通常は出席取締役の過半数による賛成により可決されます。

(6)取締役会の権限

取締役会は、インド会社法、基本定款及び附属定款等により株主総会によって行使しなければならない権限を除き、インド会社法、基本定款及び附属定款に基づいて株主総会において策定された規約に従い、会社に認められているすべての権限を行使することができるとされています(法第179条1項)。

また、以下の事項に関しては、取締役会決議により、取締役会が会社を代表してその権限を行使しなければならないと規定されています(法第179条3項)。

  • 株式について払込みが未了の株主に対して払込みを請求すること
  • 法第68条に基づいて有価証券の買戻しを承認すること
  • インド国内外を問わず、社債を含む有価証券を発行すること
  • 金銭の借入れを行うこと
  • 会社の資金で投資を行うこと
  • 融資の承認、もしくは融資に関して保証の付与又は担保の提供を行うこと
  • 財務諸表及び取締役会報告書を承認すること
  • 会社の事業を多角化すること
  • 合併(amalgamation, merger)、又は再生(reconstruction)を承認すること
  • 他社の買収、他社の支配権又は相当量の出資比率を取得すること
  • 別途規則に定められるその他一切の事項

以 上