インド 会社法(機関④)

2024年7月更新

1.取締役会委員会

(1) CSR委員会(Corporate Social Responsibility Committee)

  • (a)  設置要件

    インド会社法は、直近の会計年度において、①純資産が50億ルピー以上、②売上高が100億ルピー以上、又は③純利益が5,000万ルピー以上のすべての会社に、CSR委員会の設置を義務付けています(法第135条1項)。
  • (b)  構成

    CSR委員会は、3名以上の取締役で構成され、そのうち1名以上は独立取締役でなければなりません(法第135条1項)。
    但し、法第149条4項に基づく独立取締役設置義務のない非上場の公開会社又は非公開会社の場合、CSR委員会は、2名以上の取締役で構成されれば足ります。
  • (c) 義務
    • (ⅰ) CSR委員会の義務
      法はCSR委員会の義務につき、以下の点を規定しています(法第135条3項)。

      ① Schedule VIIに規定される活動を示すCSRポリシーを策定し、取締役会に勧告すること

      ② 上記ポリシーに言及されているCSR活動への支出額を勧告すること

      ③ 時宜に応じ、CSRポリシーの実行を監視すること
    • (ⅱ) 取締役会の義務
      法はCSR委員会の設置義務がある会社の取締役会につき、そのCSR活動に関する義務として、以下の点を規定しています。

      ① 法第134条3項に基づく取締役会報告書において、CSR委員会の構成を開示すること(法第135条2項)

      ② CSR委員会による勧告を検討後、当該CSRポリシーを承認し、その内容を取締役会報告書において開示し、会社のウェブサイトがある場合にはそこに掲載すること(法第135条4項 (a))

      ③ CSRポリシーに含まれるCSR活動を実施すること(法第135条4項 (b))

      ④ CSRポリシーに従い、直近3会計年度中の平均純利益の2%以上(会社が設立から3会計年度を経過していない場合は、直近の会計年度の純利益の2%以上)を毎会計年度支出すること(法第135条5項)
  • (d) Schedule VIIに規定されるCSR活動

    Schedule VIIに規定されるCSR活動の具体的内容は、以下のとおりです。
  • ⅰ.飢餓、貧困、及び栄養失調の根絶、予防的健康管理及び公衆衛生を含むヘルスケアの促進(公衆衛生のために中央政府が設立したSwatch Bharat Koshに対する寄付を含む)、及び安全な飲料水の利用を可能とすること
  • ⅱ.特に子供、女性、高齢者、障害者への特別支援、職業訓練を含む教育の促進、及び生活向上プロジェクト
  • ⅲ.男女平等の促進、女性の地位強化、女性・孤児のための居住施設の設置、老人ホーム、デイケアセンター、高齢者のためのその他の施設の設置、社会的・経済的に後進的なグループが直面する不平等を軽減するための措置
  • ⅳ.環境の持続的可能性、生態系のバランス、動植物の保護、動物福祉、森林農業、天然資源の保護、及び土壌・大気・水質の維持(ガンジス川再生のために中央政府が設立したClean Ganga Fundへの寄付を含む)の確保
  • ⅴ.国家の遺産、芸術、文化の保護(歴史的に重要な建築・遺跡、芸術作品の修復を含む)、公立図書館の設置、伝統工芸・芸術の促進・発展
  • ⅵ.退役軍人、戦争未亡人、及びその扶養者の福祉のための措置
  • ⅶ.地方の運動競技、国家的競技、パラリンピック競技、及びオリンピック競技促進のための養成
  • ⅷ.「Prime Minister’s National Relief Fund(首相国民救済基金)」、「Prime Minister’s Citizen Assistance and Relief in Emergency Situations Fund(緊急事態における首相国民支援救済基金)」、又は指定カースト、指定部族、その他の後進階層、弱者、及び女性の社会経済的発展、救済、及び福祉のため中央政府が設立したその他の基金への寄付
  • ⅸ.中央政府、州政府、公共事業、もしくは中央政府又は州政府の機関が資金提供する科学、技術、工学、及び医学分野におけるインキュベーター又は研究開発プロジェクトへの寄付
  • ⅹ.持続可能な開発目標の推進を目的とした、科学、技術、工学、及び医学の研究を行っている下記の機関への寄付
  • 公的資金が提供されている大学
  • インド工科大学(IITs)
  • 原子力局(DAE: Department of Atomic Energy)の下に設立された国立研究所及び自治体
  • バイオテクノロジー局(DBT: Department of Biotechnology)
  • 科学技術局(DST: Department of Science and Technology)
  • 医薬品局(Department of Pharmaceuticals;)
  • アーユルヴェーダ、ヨガ、自然療法、ユナニ医学、シッダ医学及び同種療法省(AYUSH: Ministry of Ayurveda, Yoga and Naturopathy, Unani, Siddha and Homoeopathy)
  • 電子及び情報技術省、及びその他機関、すなわち国防研究開発機構(DRDO: Defense Research and Development Organisation)
  • インド農協研究評議会(ICAR: Indian Council of Agricultural Research)
  • インド医学評議会(ICMR: Indian Council of Medical Research)及び科学産業研究評議会(CSIR: Council of Scientific and Industrial Research)
  • ⅺ.地方開発プロジェクト
  • ⅻ.スラム地域の開発
  • ⅹⅲ.災害管理(救援、復旧、及び復興活動を含む)

(2)監査委員会(Audit Committee)

  • (a) 設置要件

    すべての上場会社、又は①払込済株式資本が1億ルピー以上、②売上高が10億ルピー以上、又は③負債総額が5億ルピーを超えるすべての公開会社の取締役会は、監査委員会を設置しなければなりません(法第177条1項)。
  • (b) 構成

    監査委員会は、3名以上の取締役で構成され、その過半数は独立取締役でなければなりません。また、議長を含む委員の過半数は、会計書類を理解する能力を有する者でなければなりません(法第177条2項)。
  • (c) 監査委員会の義務

    法は監査委員会の義務として、特に以下を規定しています(法第177条4項)。
  • ① 監査人の選任、報酬、及び選任条件の勧告
  • ② 監査人の独立性、業務遂行、及び監査過程の実効性の調査・監視
  • ③ 会計書類、及び会計書類に関する監査人報告書の検査
  • ④ 関連当事者間取引の承認及び事後的変更
  • ⑤ 企業間ローン及び投資の精査
  • ⑥ 必要に応じた会社の事業又は資産の価値評価
  • ⑦ 内部的財務統制及びリスク管理システムの評価
  • ⑧ 公募によって調達した資金の使途の監視等

(3)指名・報酬委員会(Nomination and Remuneration Committee)

  • (a) 設置要件

    すべての上場会社、又は①払込済株式資本が1億ルピー以上、②売上高が10億ルピー以上、又は③負債総額が5億ルピーを超えるすべての公開会社の取締役会は、指名・報酬委員会を設置しなければなりません(法第178条1項)。
  • (b) 構成

    指名・報酬委員会は、3名以上の非常勤取締役(non-executive director)で構成され、そのうち半数以上は独立取締役でなければなりません(法第178条1項)。
  • (c) 指名・報酬委員会の義務

    法は指名・報酬委員会の義務として、以下を規定しています。
  • ① 所定の基準に従って取締役適任者及びシニア・マネジメントに選任され得る者を選考すること、これらの者の選任・解任につき取締役会へ勧告すること、及び取締役会、指名・報酬委員会、又は独立した社外のエージェントのいずれかによって行われる取締役会、取締役会委員会、及び個々の取締役の業務執行の効果的な評価方法を規定し、その履行と法令遵守を確認すること(法第178条2項)
  • ② 取締役の適格性決定、長所、独立性に関する基準を策定すること、及び取締役、主要経営責任者、その他の従業員の報酬に関するポリシーを取締役会に勧告すること(法第178条3項)

(4)利害関係者委員会(Stakeholders Relationship Committee)

  • (a) 設置要件

    一会計年度中の任意の時点において1,000名を超える株主、社債権者、その他の有価証券保有者等を有する会社の取締役会は、利害関係者委員会を設置しなければなりません(法第178条5項)。
  • (b) 構成

    利害関係者委員会は、非常勤取締役である議長及び取締役会によって決定される他の委員によって構成されなければなりません(法第178条5項)。
  • (c) 利害関係者委員会の義務

    利害関係者委員会は、会社の有価証券保有者からの苦情を検討・解決する義務を負うとされています(法第178条6項)。

以 上