インド 会社法(機関⑤)

2024年8月更新

1.監査人(Auditor)

(1)監査人の数

すべての会社は、最初の定時株主総会において、監査人として1名の勅許会計士又は1の会計事務所を選任しなければなりません(法第139条1項)。

(2)選任・解任

前1項の規定に関わらず、設立時監査人については、会社設立登記後30日以内に取締役会が選任しなければなりません(法第139条6項)。

それ以降については、第1回定時株主総会において、当該定時株主総会終了時から第6回定時株主総会終了時までを任期とする監査人を普通決議によって選任しなければなりません。その後、6回毎の定時株主総会において上記と同様に監査人を選任しなければなりません(法第139条1項)。

なお、上記に従って選任された監査人を解任するには、①中央政府からの事前承認、及び②株主総会特別決議が必要となります(法第140条1項)。

(3)任期

上場会社、もしくは①払込済株式資本が1億ルピー以上の非上場公開会社、②払込済株式資本が5億ルピー以上の非公開会社、又は③払込済株式資本が前述①②に規定される額を下回るが、銀行・金融機関等からの公的債務等が5億ルピー以上のすべての会社における監査人の任期は、以下のように制限されています(法第139条2項)。

  • 個人が監査人の場合は、一期連続5年を超えて選任・再任してはならない。
  • 会計事務所が監査人の場合は、二期連続10年を超えて選任・再任してはならない。

なお、いずれの場合も、任期満了日から5年間は同一会社の監査人として再任することはできません(法第139条但書1)。

(4)報酬

監査人の報酬額は、株主総会における決議によって、又は株主総会で決議された方法で決定されなければなりません。但し、設立時監査人の報酬については、取締役会が決定することができます(法第142条1項)。

(5)監査人の権限・義務

  • ① 会計帳簿等閲覧権及び役員への情報開示・説明請求権(法第143条1項)

    すべての監査人は、会社の登記事務所に保管されているか他の場所に保管されているかを問わず、いつでも会計帳簿等を閲覧する権利を有し、監査人としての業務遂行のために必要と思料する情報及び説明を役員に請求することができます。
    なお、持株会社の監査人は、その子会社及び関連会社の財務諸表との連結に関連する限り、そのような子会社及び関連会社の記録にもアクセスする権利が認められています。
  • ② 自己が検査した会計及び株主総会に提出されるすべての会計書類に関し、株主に報告する義務等(法第143条2項)

    監査人は、会計年度毎に監査人報告書を作成し、株主に対し、自己が監査した会計及び本法によって株主総会に提示されるすべての会計書類に関する報告をしなければなりません。そして、その報告書には、本法の規定、会計基準、本法に基づいて監査人報告書に記載しなければならない事項、その他の規則等を考慮し、かつその知る限りにおいて前述の会計及び会計書類を考慮し、当該会計年度末時点の会社の業務状況、当該会計年度の損益計算書、キャッシュ・フロー計算書等の真実かつ公正な見解を記載しなければなりません。

2.その他の機関

(1)会社秘書役(Company Secretary)

  • (a) 定義

    会社秘書役とは、1980年インド会社秘書役法(the Company Secretary Act, 1980)第2条1項 (c) において定義され、本法に基づく会社秘書役の職務を果たすために会社によって任命された会社秘書役を意味するものと定義されています(法第2条24項)。
  • (b) 設置要件

    上場会社、又は払込済株式資本が1億ルピーを超える公開会社及び非公開会社は、常勤の会社秘書役を選任しなければなりません(2014年インド会社(経営幹部の選任及び報酬)規則第8条及び第8A条)。
  • (c) 会社秘書役の職務

    法は会社秘書役の職務として、以下を規定しています(法第205条1項)。
  • ① インド会社法、同規則、及び会社に適用されるその他の法規の遵守について、取締役会に報告すること
  • ② 会社が該当する秘書基準を遵守していることを保証すること
  • ③ 別途規則に規定される義務の履行

(2)内部監査人(Internal Auditor)

  • (a) 設置要件

    以下に該当する各種の会社は、内部監査人を選任しなければなりません(法第138条1項、2014年インド会社(会計)規則第13条)。

上場会社

すべて

非上場公開会社

①  前会計年度における払込済株式資本が5億ルピー以上

②  前会計年度における売上高が20億ルピー以上

③  前会計年度中の任意の時点における銀行又は公的金融機関からの未弁済ローン又は借入れが10億ルピー以上

④  前会計年度における任意の時点における未弁済預託金が2億5,000万ルピー以上

非公開会社

①  前会計年度における売上高が20億ルピー以上

②  前会計年度中の任意の時点における銀行又は公的金融機関からの未弁済ローン又は借入れが10億ルピー以上

  • (b) 資格

    法第138条1項に基づいて選任される内部監査人は、勅許会計士、原価計算会計士(cost accountant)、もしくは別途取締役会によって決定される他の専門職でなければなりません。
  • (c) 内部監査人の職務

    内部監査人は、会社の業務等につき内部監査を行うものとされています(法第138条1項)。

以上